2013.10.31 木曜日 15:03

St.Gallen Symposium 2013参加報告

サンガレン、勇気、貢献
上田 裕也

1.サンガレン・シンポジウムとは
 1996年にスイス派遣に参加しました上田裕也と申します。このたび、2013年5月のサンガレン・シンポジウムに参加しましたのでご報告します。
 サンガレン・シンポジウムは、チューリヒから電車で約2時間弱、スイス北東にあるサンガレン(ザンクトガレンともいいます)という街にあるサンガレン大学で行われます。サンガレンは世界遺産のある街で、サンガレン修道院など美しい中世の建物が残っています。サンガレン・シンポジウムは、学生運動が盛んだった1960年代に、若者とリーダーとの対話の場が必要だと考えたサンガレン大学の学生によって、1970年に始まり、今もサンガレン大学の学生自身によって運営されているのが特徴です。サンガレン・シンポジウムはBridging Generations. Today and Tomorrow「今日と明日の世代を橋渡しする」というテーマを掲げています。サンガレン・シンポジウムには、Leaders of Todayと呼ばれる世界のリーダー800人と、Leaders of Tomorrowと呼ばれる若者200人が一堂に会します。僕は、Leaders of Tomorrowとして参加しました。
 今年のサンガレン・シンポジウムは、2013年5月2日から3日まで2日間行われ、世界中の著名な経済人や政治家が集い、大小さまざまな会場で話を聞くことができました。ランチやディナー、パーティーの時間には、さまざまなバックグラウンドの参加者と気軽に話すことができました。
 なお、Leaders of Tomorrowには、シンポジウム本番前に、さらに2日間、事前プログラムが用意されています。サンガレンやチューリッヒの観光ツアー、クレディ・スイス本社訪問、講義やディスカッション、パーティーなどを通して、若者同士の親交を深めることができました。

2.勇気を出して発言すること
 今年のサンガレン・シンポジウムのトピックは、Rewarding Courage「称賛される勇気」でした。サンガレン・シンポジウムに参加するにあたり、僕はこの「勇気」を出して発言し日本人の立場から議論に貢献すること、またスイス派遣OBの立場からも、中学生や高校生の若い方々に向けて、「将来サンガレン・シンポジウムに参加したい」という意欲を持ってもらうことを目指して臨みました。1,000人近くいる国際会議で、フロアから手を挙げて英語で質問することは、なかなか勇気のいることでした。ちょうどサンガレン・シンポジウムの開催されたころ、日本の政治経済が大きく変化して、日本への関心が高まっていたため、日本からの僕の発言に耳を傾けてもらえたように思います。サンガレン・シンポジウム最終日のパーティーでは「君はよく手を挙げて質問していた日本人だね?覚えてるよ」と参加者から声をかけてもらいました。マイクを持って発言したときは、ドキドキ手も声も震えていましたが、勇気を出してよかったなあと思いました。

3.サンガレン・シンポジウムで遭遇した3つの場面
 では、こうした世界中の人の前ではどんなことを話せばいいのでしょうか。これを考えるヒントとして、僕がサンガレン・シンポジウムで遭遇した3つの場面を例に挙げてみたいと思います。
 まず、インドの研究者による講義の場面です。ホメオパシー(同種療法)という東洋医学があるそうで、例えば「涙や鼻水の出る花粉症の人に対し、タマネギを切らせて目や鼻の粘膜を刺激する。ある症状には同じ症状を与えることで治す」という考え方だそうです。これに対し、あるアメリカ人の医学生は「それはまったく医学ではない。ホメオパシーを受けたせいで手遅れになった患者を知っている」と西洋医学の立場から激しく反論し、全員で議論になる場面がありました。
 次に、中国外交官の対話の場面です。主流の考え方として「諸外国は中国を大国だと思っている。中国は国際社会において責任ある行動をとるべきだ」と示されたうえで、その中国外交官は「中国は大国には程遠く、ようやく国民が食べるのに困らなくなったところ。中国は自分勝手ではない。むしろ中国の発展のためには世界との協力が必要だと思っている」と話しました。
 最後に、日本のコーポレート・ガバナンス(企業統治)についてイギリス人の元オリンパス社長が話した場面です。彼は「日本も日本人も好きだ」と断りつつ、「日本の企業風土は古く閉鎖的で、法制度にも問題がある」と述べました。
 これらの話から、いくつか共通してわかることがあるような気がします。
 1つ目は、「人間の多様性」。世界の人々は多様性に満ちていて、さまざまな考え方があり、さまざまな人がいます。
 2つ目は、「グローバル・スタンダードの存在」。つまり、世界にはさまざまな考え方がある一方で、多くの人に支持されている常識あるいは主流の考え方があるようです。
 3つ目は、「常識に逆らう難しさ」。自分の考え方が、常識や主流の考え方と大きく異なる場合、相手に伝えたり理解してもらうことは非常に難しいようです。

4.世界で何を話せばいいか
 サンガレン・シンポジウムでの経験から、まさにこれら3つを理解することが、世界で何を話せばいいのか、という問いに対する手掛かりになるのではないかと思いました。
 1つ目の「人間の多様性」を理解するには、勇気をもってさまざまな人々と出会い、話すことが大切です。まずは「自分と相手の同じところは何か」を考えながら、例えば「この料理おいしいね、僕もこれ好きだよ」と共通点が発見でき、ほっと安心して相手への親しみがわくのではないでしょうか。そして、それが理解しあうきっかけとなり、「自分と相手との違うところ」についても教えあい話すことができれば、自分と異なる相手を認め、多様性を尊重することへとつながると思います。
 2つ目の「グローバル・スタンダードの存在」については、これまでその多くは欧米諸国を中心に形成され発信されてきました。グローバル・スタンダードがあるおかげで、世界の人々が一緒に議論できます。こうした多くの人々が支持する考え方を形成することは非常に難しいものなので、欧米諸国のこれまでの努力に敬意を表しながら、まずはグローバル・スタンダードを学ぶことが大切だと思います。そして、今後は日本人もこうした形成を手伝い、貢献していければ素晴らしいと思います。日本の立場から「こういうの日本でうまくいってるから取り入れてみたらどうかな」とみんなの考え方を少し広げたり、「日本で調べてみたらこういうことがわかったよ」とみんなの考え方に少し深みを与える発言ができれば、歓迎されるのではないでしょうか。
 3つ目の「常識に逆らう難しさ」については、今年のトピックがヒントになりそうです。Leaders of Todayの1人として参加されていた石倉洋子慶応大教授は、今年のトピックであるRewarding Courageを「常識や潮流に逆らっても事実を求める勇気」と訳されていました。主流の考え方と違うことを言うのは、とても勇気のいることです。もしかしたら笑われるかもしれない。それでも、自分の考えを発表すれば、みんなに新たな価値のある視点を与えることができるかもしれない。自分の発言が、どこかで何も言えずに黙って困っている人の手助けになるかもしれない。自分が行動したり発信したら少しでも世界を良くすることができるかもしれない。こうしたことを考えながら、勇気を出して伝えていく。こうした貢献のできる人たちが、まさにLeaders of Tomorrowではないかと思います。

5.おわりに
 最後に、このような素晴らしいサンガレン・シンポジウムに参加できたことを大変うれしく思うとともに、サポートしてくださった関西日本スイス協会のみなさまに厚く御礼申し上げます。若い方々には将来ぜひこのサンガレン・シンポジウムに参加していただければと思います。今後とも、関西日本スイス協会や、若い方々のためになにか貢献できるよう努めていきたいと思います。

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